私たちは滋賀県甲賀市信楽町黄瀬にある、築42年の古民家を借りて制作しています。

黄瀬(きのせ)は1300年も昔にあった紫香楽宮跡にほど近い場所で
遠くの鳥の鳴き声が聴こえる、とても静かないいところです。

2020年の春にこの家に引っ越してきました。
夫婦ふたりで暮らしながら、ほとんど毎日うつわを作っています。

それでは、うつわができるまでの工程を少しだけご紹介します。

1.土を練る=つちこねる

うつわ作りは、まず土を練ることからはじまります。

土の密度や成分を均一にしたり、空気を抜く作業です。

いいものを作るには、まずしっかりと土をこねること。
「つちこねる製陶所」の名前は、初心を忘れずに、という想いから付けました。

2.かたちづくる

土を練ったら、成形です。
ろくろを使ったり、石膏で型を取ったりして器を形作ります。

新しい形を試作するときは、食卓にすっと溶け込むような器をイメージしています。

3.底を削る

つぎに、削りです。こうして高台(底の部分)を作ります。
半乾きのときにタイミングを見計らって削ります。
ここで削る量によって手に取ったときの重みが違ってくるので、慎重に手早く作業します。

4.素焼きする

数日間よく乾かしてから、700℃で8時間カラっと焼きます。
のちほど釉薬を掛けてから焼く「本焼き」をするときに
釉薬がはがれ落ちないようにするための焼成が「素焼き」です。
ここで水分が完全に飛んで、一回り縮んで軽くなります。

5.釉薬をかける

そして、最後に釉薬を掛けます。もうゴールが見えてきました。

この釉薬が1230~1250℃で融けて、器の表面をコーティングしてくれるイメージです。

ツヤがあるものから、マットなもの、メタリックなものまで、
現在つちこねる製陶所で使用している釉薬は5種類あります。

この動画の釉薬は灰色をしていますが、焼くと明るい青色に発色する釉薬です。

イメージする焼き上がりにするために、
釉薬の濃度や釉薬につける秒数を調整します。
秒数はほとんど感覚が頼りで、たとえばさくら色のお茶碗なら
1、2、3とカウントするといった感じです。

釉薬について

釉薬(ゆうやく・うわぐすり)は膨大な種類の材料を0.01グラム単位で調合して作られます。

完全に同じ配合の釉薬を作り、全く同じ焼き上がりを再現し続けるのは大変難しい技術が必要です。
土の成分や焼き方で色が大きく変化するものもあって、あれもこれもと組み合わせを試していくと
一生かかるかもしれない…と思ってしまうほど途方のない世界です。

私たちが作っているのは日常使いの器なので
器が割れてしまったときにもまたお買い求めいただきやすいように、
できる限り同じ色味に焼くことを意識しています。
そんな安定した焼き上がりを目指すには、安定した釉薬が不可欠です。

そこで私たちはその道のプロである釉薬屋さんから購入しています。

釉薬屋さんがつくる釉薬は長い年月で開発されつづけてきた研究の賜物です。
現代になり、個人の作家でも釉薬屋さんから少量ずつでも購入できる時代になりました。

「よし!」という色に焼きあがったときは、プロの技術を使わせてもらえるありがたみを実感します。

6.本焼きする

素焼きに続いて2回目の焼きを「本焼き」と言います。
約1230℃から1250℃というとてつもない高温で焼いて仕上げる最後の工程です。
私たちは普段この写真の大きさの電気窯を使っています。
薪窯と違って触っても火傷はしないですが、冬は近くにいるとあたたかいですよ。

7.うつわができる

こうしてできあがった器は、どなたかに購入していただいて、使ってもらうことでようやく完成です。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
私たちの作った器と一緒に、器を使う楽しみをお届けできれば嬉しく思います。


つちこねる製陶所